長年広報をやっていると、“あたる”サービスは、概要をさっとヒアリングした段階でわかるようになってきます。(もちろんはずれることもありますが・・・)
すごく当たり前なことですが、売れるサービスというのは「分かりやすい」、これにつきます。
・サービスの面白さや便利さが誰でも理解できる
・ターゲット層が目にうかぶ
・高度な知識やリテラシーを必要としない
・お金を払うことに納得できる
こういったサービスは、ターゲットやユーザーのメリットがきちんと整理され、そこに向かって作られているのでプレスリリースを書くのも、プロモーションを企画するのも簡単なわけです。チームの認識にもずれがなく、誰に聞いても同じ答えがかえってくるので、社内調整に手間を取られることもありません。こういうサービスはたいてい売れます。
そして、その他には
・チームにその分野のオタクがいる
・第2フェーズまで見据えられている
・開発やバックエンドの人にも好評である
・企業向けサービスでは、お金を出す人、実際利用する人の双方を説得できる要素がある
このあたりも、”あたるサービス”によく見られる要素です。
しかし、こうしたサービスばかりなら広報担当はいらなくなってしまいますね。
今回は、広報担当者が「難しいなぁ、どうしようかな」と感じるパターンも2つほど、その時に広報としてできることと併せてご紹介します。
パターン1 サービスの企画にブレがある
サービス・商品を作るうえでは、当然ターゲットやユーザーメリットは明確であるべきですが、サービスが完成しているのに、誰にどんなメリットがあるのかはっきりしないケースは意外と多いものです。
こうしたサービスはトップダウンで作られたものが多いような気がします。
・この素晴らしい技術を使った何かを
・競合のあのサービスに対抗できる何か新しいサービスを
・偉い先生の論文にあった今後拡大するあの市場に向けた何かを・・・
こうした上層部からの指示で始まったサービスは、途中で止めることが難しく、なんとなく走り続けてしまう。そして、無理やりひねりだされたターゲット像やユーザーメリットはたびたびブレ、ぼやっとしたままサービスができあがってしまうのです。
本来、こうしたことは起こらないのが望ましいですが、そうした局面でも、広報担当者としてできることもあります。
まずは、広報の機会を活用して、サービスの方向性を整理し、文字として残すこと。きちんと活字に残すことは、想像以上に強い「事実」になるので、トップも担当者も覚悟を決めることになります。なんとなく曖昧にしてきたことを、広報準備を通じて明確にすることで、チーム全体で方向性を見直す機会になります。
そして、広報発表後の記者の反応をフィードバックすることも大切です。皆で色々手を尽くしてもうまくいかなかった場合、記者という見識のある第3者からの意見を参考に何がいけなかったかを考えることができます。社内では誰も言わなかったことも、記者のコメントであれば議題に上げやすくなります。わざわざ時間や労力をさいて、辛辣なコメントをしてくれる人はなかなかいませんが、日ごろから記者と信頼関係を築いてきた広報担当者だからこそ、そうした貴重な意見を引き出すことができるのです。
パターン2 時代を先取りしすぎている
「すごそうだけど、何かがピンとこない」
新しいサービスについて聞いた時、こういう感覚になることもよくあります。このパターンの場合、短期的には結果がでないケースが多いです。世にないサービスや、新しい発想を理解すること、利用者に広めていくことはとても難しいことです。たとえば、LINEやインスタグラムのようなサービスは、過去に似たものを提供したり、企画した企業はたくさんあると思います。その中で、投入のタイミングや、プロモーションに成功したのが、今広く使われているサービスではないでしょうか。
つまり、短期的に結果は出なくても、ゆっくり育てれば売れるサービスということになります。
もちろん、画期的なプロモーションにより市場を創出できるのがベストですが、「良いサービスなのに情報の広がりがいまいちだった」という時は、タイミングについても考えてみてください。たとえば、利用者の知識がついてきていない、端末の機能が十分でないな
ど、市場環境が追い付いていないことも考えられます。その場合、最初の広報発表だけであきらめず、タイミングがくるまで細くでも長く、情報を発信し続け、先駆者であり続けることも大切です。
サービス・商品の発表だけがプレスリリースではありません。キャラクターとのコラボ、サービスの利用動向や分析、調査広報、導入事例、季節のイベントを取り入れたキャンペーンなど・・・工夫次第で様々な切り口で情報発信の機会を創出することができます。
また、SNSを活用することで違ったスタイルで情報を発信することもできますので、新しい市場を切り開く後押しとなる情報発信を根気よく続けられるとよいですね。