コロナ禍で、改めて注目された『コミュニティマーケティング』。コミュニティ形成の有無により、クラウドファンディングの成否はもとより、店舗の存続が左右されたり、情報の発信力が異なったりと事業の存続に大きな影響を与えたと思います。toCだけでなく、toBでもSaaS業界をはじめ改めて注目されています。改めて、コミュニティマーケティングについて考えてみたいと思います。
■コミュニティとは
「コミュニティ」と聞いて何を想像するでしょう。住んでいる町の繋がりであったり、興味や趣味でつながった共同体と想像するでしょうか。
特に後者はSNSの普及で大きく発達しています。
前者は店舗を構えて商売する方には重要ですが、今回は「興味や趣味でつながった共同体」がメインになります。
地域の繋がりのコミュニティを軽視しているわけではなく、地域の特色を生かしたコミュニティやマイクロコミュニティの形成をしてコミュニティ全体のビルドアップを考えると重要なのですが、今回は大枠から考えられればと思います。
「興味や趣味でつながった共同体」=「コミュニティ」とコミュニケーションを取り、関係を深められると様々なメリットがあります。
まずは顧客のフィードバックを容易に得られます。
商品やサービスに対し、余程の不満がない限り、消費者はサイレント・マジョリティになりがちです。
この様な状況では、CSに届く意見や消費者がSNSで発信された情報だけがフィードバックの頼りになります。
また、コストをかけてフォーカスグループやアンケートを実施するのも一つですが、もっと手軽にコストを抑えて実施できればいいですよね。
コミュニティが形成されていれば、この様なフィードバックを容易に得ることが可能です。
さてコミュニティの参加者とはどんな方でしょうか?まずは、商品やサービスに興味のある方や詳しく知りたい方でしょうか。
次に商品の購入やサービスの導入し、感想を伝えたい方、そして、その商品やサービスが気に入りファンになった方でしょう。
この様なユーザーの集まりを形成させ、発展させるのが『コミュニティマーケティング』だと考えています。では、ユーザーの集まりをどの様に作ればよいのかを私の経験を記します。
■実録コミュニティ立上げ
私が経験したケースは、自然発生的に生まれていた小さなコミュニティを大きなコミュニティにまとめ上げることでした。
自然発生的に小さなコミュニティは作られるケースは多いですが、小さなコミュニティを横断的に繋げることができれば面白いかなと考え、数年前に担当していたプロダクトの公式オフ会を企画しました。担当していたプロダクトは、それこそオジサマ向けサービスだったため、自主的なユーザーオフ会は居酒屋で開かれているケースが多かったので、イベントのテーマを飲み会に設定して、「飲み会でこんな風にプロダクトで楽しんでくれたら嬉しいな」というメッセージをコンテンツを詰め込みました。
これでは本当のただの飲み会になるので、イベントスペースや居酒屋での開催ではなく、広告代理店さんと色々企んで、普段借りるのが難しい施設のスペースをお借りして(それも破格で)、媒体社さんに協力を仰いで専門家のトークショーなど企画しプレミアム感を出しました。ただ、一つの懸念を残しながら。
その一つの懸念は「初対面のオジサマたちが盛り上がれるのか?」でした。最初は確かにバラバラでしたが、時間が進むにつれ、同じプロダクトのファンという共通項もあってイベントは大いに盛り上がり、初対面のオジサマたちがお帰りになる頃は、二次会に行かれる方、連絡先を交換される方など数多く見受けられました。
また、参加者は100人の募集に対し、2,000人近い応募があり、実際の参加者は会場の最寄駅への電車が一時不通になるほどの天候が悪い中、90名以上の参加があり、ユーザーの熱意に感動を覚えました。
実際にマーケティング的な効果はどうだったのか?と気になると思われますが、表立って目に見える部分としては、数社媒体社に取材の依頼をお願いしてましたので、小さいながにも記事掲載して頂きました。
また、参加者にノベルティをお渡ししたのですが、見栄えの良いノベルティでしたので、多数の方がSNSで上げていただきました。
では、数字的な影響はどの様だったのでしょうか。
抽選をする際に、大枠で3つのグループに分けて、ヘビーユーザーやSNSなどで積極的に情報を発信している層、プロダクトの利用期間は短いが積極的に利用している層、そして、カスタマーサービスやWeb上の掲示板によく意見を頂ける層に分けて抽選を行いました。まず、実際に来場頂けるのか?を確認する目的で実際来場者数は80〜85人、当日の天候を考えると70人でも御の字かなと想定してましたが、先述の通り90名以上の参加でした。
イベント自体は大きく盛り上がり、終了後の動向は興味深い傾向が見られました。
まず、プロダクトの利用期間は短いが積極的に利用している層ですが、同様のユーザーでイベントに未参加の方と比較すると離脱率は大きく下がり、ヘビーユーザーに転化しました。
また、積極的に自主的なオフ会を開く方などいらっしゃいました。ヘビーユーザーやSNSなどで積極的に情報を発信している層はより一層活発に行動して、まさに「客が客を呼ぶ」状態になりました。
そして、カスタマーサービスやWeb上の掲示板によく意見を頂ける層・・・俗に言えばクレーマー層なのですが、実際にイベントでお会いすると、最も熱意のあるユーザーであることが分かり、スタッフと話が進み実際の意見が聞けました。そして、イベントに参加したクレーマー層は一転してヘビーユーザーに変わり、SNSや掲示板で積極的にポジティブな意見を発して頂ける様になりました。「やはり、人なので情が移る」と当時は考えていましたが、それもよりも「相互理解を深められた」というのが正解だったと思います。
この相互理解がコミュニティマーケティングのキモだと考えています。
・・・と都合のいい事だけ記載しましたが、マクロ的な視点では大きな波風を立てる事はありませんでした。
来場していただいたユーザー、イベントに協力していただいた皆さん、そして、プロダクトの運営にとってそれぞれ満足度の高い結果でしたが、あくまでもミクロな成果であって、大きな成果は見込めないのです。大きな成果を生み出すためには、いかにユーザーと運営の相互理解を深めることを考える必要があります。まず、相互理解を深めるために一回では達成できないとまず認識しましょう。
形が変わってもいいので継続性が重要になります。続いて、成果が出にくい、見えにくい点を理解しましょう。
とあるユーザーの本音を聞けても、そのユーザーだけの意見というのも十分にあり得ます。やはり、コミュニケーションを数多くの方と深める必要があります。
そして、コミュニティマーケティングの最大の欠点というのが成果が数字化しにくい、直接業務に関わる人は成果を体感できますが、アウトプットが数字化し難いため、成果を評価しづらい、コストに見合っているのか判断がつかないまま、継続できないパターンが多々見受けられます。
私自身も継続するために、新たな共催者を探し色々手を尽くしましたが、その前にプロダクトを離れることになりました。
実際にコミュニティマーケティングを行うのであればこの点を理解し、求める成果になるまでの長期間のロードマップと、折れない心が必要になります。
ちなみに、私が担当していたプロダクトのロードマップは、次のステップとして、自主的なユーザーオフ会の開催数を増やすために何か仕掛けが必要だと考えていました。
そこで自主的なユーザーオフ会の幹事をアンバサダーと任命し、ノベルティの配布ができればと思ってました。
そこで簡単なレポートやアンケートで、ユーザーのリアルなデータを手に入れたかったのです。
そして、そのデータを元に第二回公式オフ会のスポンサーさんをつけて、スポンサーさんのサンプリングの場にしつつ、コミュニティの形成を目指していましたが。。。見える成果という壁を乗り越えられず、予算をつけられませんでした(笑)
次回は、コミュニティの効用など深堀りできればと思います。